イギリス便り002「コロナ禍でもへっちゃら?」
「なぜイギリス人はヨーロッパ人よりもコロナへの警戒心が薄いのか」
Why are Britons so much more relaxed about Covid than Europeans? (The Guardian, 15 Oct 2021)
大陸ヨーロッパの多くの国では、いままた増加傾向のコロナウィルス感染者数を脅威ととらえ、クリスマスを前にふたたび規制を強化する動きが高まっています。イギリスでも一日に3万人、4万人・・・と増え続け、相変わらずヨーロッパで感染者数首位を独走中ですが、それにもかかわらず、イギリス政府はロックダウンなどの徹底的な措置は講じず、今後も「コロナとともに (with Corona)」、経済の復調を目指した政策がつづきそうです。こうした大胆な決断の背景には、「ワクチン接種者が増えたことにより、重症化リスクが少ない(→病床ひっ迫率が低い)」こと、また最近では世界で初めて内服薬も承認され、国民の間に「コロナにかかっても治療できる」という安心感があると考えられます。しかし、それとは別の次元でもうひとつ、ここにはある種の《イギリス的メンタリティ―》があらわれているといえるのかもしれません。
先日、興味深い記事を見つけました。2021年10月15日付の『ガーディアン』です。
この記事には、現在のイギリスにおけるコロナへの警戒心の低さに対して、トルコを訪れたあるイギリス人は「自分たちには(コロナの惨事は)起こりえない。どうすればいいかなんて、自分たちが一番よく知っている」という、なんの根拠もない確信があると指摘しています。
イギリス政府もまた、コロナへの向き合い方は国民それぞれの判断に委ねているようです。各人の思想の自由を尊重しようということなのでしょう。
マスク着用への違和感もイギリスでは依然として根強いです。呼吸をする「自由」を侵害されるように感じるのでしょうか。スペインに逗留中のあるイギリス人は、この国でのマスク着用は「強いられたことなのではなく、自らを守ること (‘protection, not an imposition’)」だと認識されていることに気づきました。
イギリスは、歴史的に個人の尊厳や自由というものを重んじてきましたが、現在の状況を見ると、「自由」の意味がどこかはき違えられているように思えます。いくらワクチン接種者が増えたとしても、《自分だけは大丈夫》と不要不急の外出を繰り返したり、マスクを着けずに密閉された場所に入ったりすることは、ワクチン未接種者(そして彼らにはワクチンを接種しない「自由」があること然り)や基礎疾患を抱えた人々にとって 大きな脅威となります。マスクは、「見えない」ウィルスからの感染を抑制する防御策であるとともに、社会のどこかで接する不特定多数の人々への「見える」シグナル、《私はあなたに配慮していますよ》という「見える」思いやりなのではないでしょうか。
https://www.theguardian.com/world/2021/oct/15/why-are-britons-so-much-more-relaxed-about-covid-than-europeans
ロンドン・ヴィクトリア駅には、《ソーシャル・ディスタンス》《マスク着用》を呼びかける看板や垂れ幕が設置されていました。しかし構内では、マスクを着けていない人もかなり多い印象でした。